これが世界一流の研究者!UC BerkeleyからMITに移る渡辺悠樹(ハルキ)さんにインタビュー!物理学を究める生活をざっくりご紹介

       
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Taku

May.05.2015 - 10:00 pm

今回はUC Berkeleyで物理学の博士号をこの5月で取得する渡辺悠樹(ハルキ)さんにインタビューしました!
 

<略歴>

2005年 東京都立西高校卒業

2010年 東京大学物理学科卒業

2012年 東京大学物理学科修士号取得

2011年ー2015年 UC Berkeley Physics Ph.D Program 物性物理専門

2015年 Massachusetts Institute of Technology Post-Doc Pappalardo Fellow予定

 

私がInternational House (海外留学生の寮)に足を運ぶと、そこで会うたびにひときわ存在感を出している彼こそがUC BerkeleyのPhysics Ph.D取得中の渡辺悠樹さんだ。私みたいな日本人が相手でも常に英語でしか会話をしてくれない少し変わったユーモアあふれる方だ。他の日本人生徒やその他の国々からの留学生に囲まれいつも日本語訛りの英語で話しながら、時には若い女の子たちを相手にジョークをかましながら、常に多くの人に好かれている。そんな彼の名前が付いた物理の定理があるというのは、なかなかの彼のスゴみを感じざるを得ない。それも一つでだけではないらしい(笑)。

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*右が悠樹さん。左は村山斉さん。カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)にて。

 

<バークレーに来た経緯>

東京大学にいた頃、彼はどちらかといえば、授業よりも自主ゼミや物理の本の読書会など、仲間たちと学問を通して交流することに力を入れていた学生だったそうだ。物理学を選んだのも(もともと数学や理系が得意だったのはあったが)学部紹介のオリエンテーションで物理の教授の話が一番面白く、物理のことを楽しそうに話すその人の人柄に憧れたからだそうだ。そのころもBerkeleyやStanfordに見学に行く機会があって留学のオプションはあったけれども、優秀な同期に恵まれている東大で過ごすほうが有意義だと感じていたのが大きくて、あまり真剣には考えなかった。それに最初の一二年は周りの頭の良さについていくのが精一杯でそこまで考えが巡らなかった。

学部を卒業し、そのまま東京大学の院に進んだ。しかし、人との交流が多かった学部生活に比べ、東京大学の院の生活はどちらかというと研究室にこもり、薄暗い感じで退屈だったそうだ。周りには輝いている人はいなかったし、自分が5年後大学院を卒業するときに自分自身でなっていたいと思う人はなおさらいなかった。海外の大学に目覚めたのは、東京大学で開かれていた米国大学院学生会というアメリカの大学院に進みたい人たちのための説明会へたまたま知人の誘いで参加し、それがきっかけでアメリカの大学を回ったときにハーバード大学などで研究する人たちの話を聞いて、海外で挑戦することに感化されたのがはじまりだそうだ。
来たいと思ったらすぐに行動にうつした。まだ東京大学での修士論文も書き終わっていないのに、バークレー、プリンストン、イリノイ大学に合格すると半年後にアメリカに飛んだ。バークレーのスノビッシュでなく、それでいて物理関係のすごい教授がそろっていることが気に入って迷いはなかった。

 

<自分を追い詰めろ>

バークレーに来てからの数年は突っ走る毎日だった。1年目2年目はバークレーのPh.D Program では研究をやらせてもらえないので、自主的に研究を続けていたところかなり忙しくなりフラストレーションのたまる日々だった。しかしそんなフラストレーションが良い方向に向いたのか、その頃から自分が一番頑張れる生活スタイルが徐々に出来上がっていったのだという。そんな彼がちょうど去年までつらぬいていた生活スタイルをお見せしよう。

スケジュール例

4時 起床

5時 スタバでコーヒーを飲み軽く朝ごはん

5〜9時 研究
(研究ってなにするんですかと恐れながら聞いてみた。まさにパソコンと紙とペンを持参し、計算したり論文を読んだり、なにかのアイディアなどを考えるそうだ)

9〜10時 ジムでランニングと筋トレ(最近はスカッシュにハマっている)

10時 学校(セミナーに参加したり、自分が教えるディスカッションに行ったり、スタンリーホールに隣接するカフェで教授や他の学生達と話したり)

お昼頃ランチ

1時 人と話したり、論文を書いたり、計算したり、、、

6時 夕飯を自炊、片付けて、ちょっとリラックス

9時 就寝

 

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*2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんとの写真。大阪大学にて(いま南部さんは阪大の名誉教授です)。

人間は追い詰められた時に潜在的に眠っていた本領を発揮するものだという。去年、悠樹さんは8本も論文を書いた。尋常じゃない。まるで合宿のような日々を今でも思い出すとあの頃の自分はすごかったと感心するほどだそうだ。

そんな追い詰め生活スタイルもあってか近年の彼の物理学での功績はすごい。まずバークレーに来る少し前に、ドイツの物理学者トーマス・ブラウナー氏と共同研究する機会があり、そこであの有名なノーベル物理学賞の南部陽一郎氏の「南部理論」をさらに現実にあてはめるために一般化できる方法を発見したり(Watanabe-Brauner関係式)、最近日本でメディア露出が激しい2011年までバークレーにいた村山斉氏との共同研究で、南部陽一郎氏が築いた現代素粒子物理学にあった「対称性の自発的な破れ」という問題を解決したりと(それがWatanabe-Murayama定理、ググると出てくる笑)それもこれも去年までの追い詰め生活の中で積み上げてきた功績だ。私も村山斉氏についてはNHKの爆問の番組などに出ているのを見たことがあって知っていたから、こんなにも身近な人がこんな関わりを持っていたことに驚いた。

 

<物理学とは>

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*IPMUで撮った村山さんとの写真。

物理に対する今もなおふくらみ続ける情熱があるのにはちゃんと理由がある。物理学と向き合っていく中で、彼が自分を精神的に追い込んでまでも求めるものは、方程式を知っていればどんな物理現象も数式で説明ができるという美しさだという。例えば結晶や磁石、ヘリウムの超流動など、一見全く異なるように見える物理現象の背後には統一的な物理法則が潜んでいる。ただ単に知識を増やすのではなくそのような法則に従うことに意味がある。そしてまた、発見しきれていない法則を完全化するほうに周るというのは違った喜びに満ち溢れている。

科学というものは発見のくりかえしだ。僕らが進めたけれどまた未来に引き継ぐ人がいる。それ自体もすばらしいことだ。僕らがやったことが教科書に載って高校生が読んでくれるかもしれない、それこそが悠樹さんにとっての自分が生きている上での価値だという。どんな分野であろうとも人に接して意味がある。次の世代に英知を語り継ぐことで生きた爪痕を残すとでもいえよう。


 

<海外で戦う自信を持ってほしい>

研究生活はそれほど束縛されるものがなくほとんどが自主的なこともあり、悠樹さんはよく日本へ帰る機会がある。そこで高校生や大学生を相手に研究のおもしろさを話すことが度々ある。悠樹さんのような一流の研究者が熱心に留学について語るというのには、彼自身が高校生大学生だった頃に海外へ留学することなんて頭になかったからだという。高校の物理と大学の物理は全然違うから、そういう場所が変われば学問もガラリと変わるのだということを高校生相手にうったえる。

この夏も日本に帰るときは自分の母校で自分がどんな勉強をしているか話すそうだ。その際、悠樹さんは初の試みとして、生粋の日本人の前で英語でやろうと思っているそうだ。自分みたいに英語なんて最低限な日本人がバークレーという世界レベルの舞台で奮闘しているということを知ってもらい、そして多くの日本人に英語に自信を持ってほしい。海外で戦う自信を持ってほしい。そして研究の面だけじゃなく大学について興味を持ってほしいと悠樹さんは語っていた。

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*南部・ゴールドストーン粒子で有名なJ. Goldstoneさんとの写真。MIT にて(彼はMITの名誉教授です)。

海外で通用する物理学者になることは並大抵のことではない。自分の研究結果が日本の新聞やメディアで取り上げられるだけでは国内だけの知名度なのでなかなか海外では取り合ってもらえない。(そう言われながらも、実際に悠樹さんの記事が載った新聞を見せてもらうと、日本でメジャーな新聞が総揃いでそれも結構大きな記事なので驚いた。)最近悠樹さんが海外に認められた手応えがあったのは、ハーバード大学やカルテックからの講演や研究のお誘いが正式に来たことだという。そして何よりMITでPappalardo fellowshipという有名で名誉あるポジションをオファーされたことが一番悠樹さんの中で大きかった。広い物理学の全分野から年間3人しか選ばれず、日本人としては2人目で、給料も結構出て申し分ない研究生活が託された。

次なる新天地、MITでの生活は楽しみで仕方がないという。今年のバークレーでの生活はその前の詰め込んでいた時よりはユルく、居心地の良さは半端ないという。自分を評価してくれる教授や仲間たちに囲まれ申し分ないほど充実感はある。しかし新しい環境に身を置くことによって、また一から始めたいのだそうだ。自分のことなど聞いたこともないような教授を相手にどのようにして自分のスゴさ見せつけるか。また自分を追い込み、なんの支えもないような場所で自分を進化させる。そうすることで自分の力をまた最大限生かしたいと私に話してくれた。

       

Taku

UC Berkeleyで数学と哲学を専攻しています。大学生活はなるべく勉強から離れて音楽に夢中になったり小説を読み耽ったりしようかと甘いことを考えている2年生です。どうぞよろしくお願いします。ご感想・お問い合わせ大歓迎です:takut12[at]gmail.com