慶應大学からUC Berkeleyに交換留学していた越野結花さんにインタビュー!The Daily Californianで記者として

       
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Taku

Jun.22.2015 - 01:42 am

海外に出てやりたいことを考えさせられた時、多くの場合まずは日本人として世界に発信できること、日本人だからできることなどを目標にする場合が多い。しかし、今や社会はグローバル化が進み、それだけでは世界で活躍する様々な人種の大多数には太刀打ちできない。ジャーナリストとしてこれからの社会で活躍するためにも、結花さんは日本国のみならず海外からの目線を養い、そこから伝えたいことを考えなくてはならないと言う。

<略歴>

 

1993年 米国ロサンゼルス生まれ。

1999ー2002年 アメリカ滞在、現地小学校に3年間通う

2012年 渋谷教育学園渋谷中学高等学校卒業

2012年 慶應義塾大学法学部政治学科入学

2012年 ミス慶應コンテスト準グランプリ受賞

2013ー2014年 The Harvard Project for Asian and International Relationsを東京に誘致、企画部門代表として活動。

2014ー2015年 UC Berkeleyへ交換留学(専攻:政治)


<留学するまでの思い>

 

海外大学に目を向けたのは渋谷教育学園渋谷中学高等学校(渋渋)に通っていたころからだそうだ。渋渋ではハイレベルな英語の教育と、ユネスコスクールとして国際理解教育に力を入れている。帰国子女であった結花さんはそんな英語での教育の雰囲気に興味を持ち、校内で盛んな模擬国連や英語ディベートクラブなどを通して、英語で学ぶことに目を向けた。また間近で共に活動してきた先輩達たちが海外の有名大学に進学するのを見て、自分もそんな先輩たちの背中を追いたいなと感じていた。

 

慶應義塾大学法学部に進学後も、海外大学で学べる機会への興味は深まっていく一方だった。高校の時、模擬国連部をやっていた時に芽生えた国際政治への興味も、大学で世界最大級のアジア学生カンファレンスHPAIR(The Harvard Project for Asian and International Relations)を誘致・運営したり、日露学生会議などで世界各地の学生達と交流する中で、さらに深まった。現代アジア、そして世界の入り組んだ複雑な政治経済システムの中で、日本が今現在どうあるか、そして将来どうあるべきか、もっと学び考えたいと思うようになった。

 

大学一年次に、留学の模擬体験を兼ねて参加したスタンフォードでの一ヶ月間の聴講プログラムでは、常に新しいビジネスやアイディアが生まれては世界に発信されるシリコンバレーのエネルギーに包まれ、イノベーションを生み出すアメリカ経済の制度設計やメディアにも興味を持つようになった。スタンフォード大学の学生寮に滞在し、留学がどんなものなのか体験し、学部生生活の1年間を海外大学で過ごしたいという志はさらに強くなった。

 

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大学生でいられる短い時間において、留学とはとても貴重な体験である。一回しかない機会なら慎重に、どの教授から何を学びたいのかが明確化するまで待ったほうが良い。でも行きたい気持ちがあるのなら絶対に行くべきだと結花さんは言う。結花さんが通っていた慶應義塾大学法学部政治学科では3年前期までで卒業単位がほぼ取れてしまい、制度的に1年間の留学がし易く、そして結花さんが留学する時期にちょうど同期の間でも留学することが流行になりつつあったという。日本政府も日本の学生に留学を促している中で、文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」など留学を後援する団体も増え、学生が留学するチャンスは確実に増えてきている。

 

だからといって日本の大学に悲観しているわけではない。中には世界レベルの研究ができるプログラムもあるし、日本の大学にいても与えられた機会の使い方や自分の意識の仕方で、グローバル人材になることは可能な時代だという。


<UC Berkeley>

 

そんな中で、結花さんにとって明確な行きたい場所になったのが、UC Berkeleyだ。国際政治を学びながら、メディアや日々新しい情報、ビジネスが生み出されるIT関連のことにも手が届く。世界トップレベルで優秀な学生が揃っているだけでなく、ノーベル賞受賞者など著名な教授も目立つ素晴らしい環境だ。また緊張感の高まっているアジアの国際関係や、アベノミクス以来関心が高まっていた政治と経済システムの相互作用などについて学ぶ上で、国際関係論や政治経済学の授業が充実している同大学の政治学科は魅力的だった。特に日本の政治経済の専門家として、日本の新聞にも寄稿経験のあるスティーブン・ヴォーゲル教授から直接話を聞ける機会もあるかもしれないと考えた。

 

そして実際に留学中は、秋学期にそのヴォーゲル教授の教える比較資本主義論の授業を取り、ひとえに資本主義といっても国によって様々な政治制度があることを学んだ。さらに自分の英語力に磨きをかけるためにも、College Level Writingのクラスを取った。オフィスアワーに毎日通って先生に細々と質問し、フィードバックをもらったりして自分を前へ前へと挑戦し続けた。たった1年しかない留学期間を中途半端には終わらせたくないと、秋学期は本当に自分の書く能力を徹底するため「書きまくった」そうだ。

 

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<The Daily Californian>

 

UC Berkeleyではどうしてもやりたいことがあった。それはこの大学の学生メディアThe Daily Californianで働くことだ。州内そしてナショナルレベルで受賞歴のあるThe Daily Californian(Daily Cal)のことは以前から耳にしていて、ぜひバークレーに行くなら働きたいと思っていた。

 

Daily Calは学生による会社であり、大学公認の組織ではない。ジャーナリズムのモットーとして権力には屈しないというのがあるため、ファンディングから何まで全て自らやり、キャンパスの一歩外に位置している学生主体の独立ニュース機関だ。だから、その分批判的な記事を出すことができる。あの有名な映画「インサイダー」のモデルともなった、元CBSのドキュメンタリー番組”60 minutes”のプロデューサーでもある、ローウェル・バーグマン教授がいるUC BerkeleyのSchool of Journalismとも深い関わりがあるそうだ。ジャーナリズムに興味があるのならバークレーにいてDaily Calをやるしかない、やらないのはもったいないというほど、結花さんはDaily Calについて情熱的に私に語ってくれた。

 

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本当はニュース部門で記事を書きたいと思っていたが、現時点での英語力・取材経験ではまだ採ってくれないと思い、動画部門でApplyしてみようと試みた。まだ触ったこともなかったiMovieを開いて、慣れないMacBookと3日間徹夜で向き合いながらビデオを3つ製作した。この時、締切期限に間に合わせるため1分でも惜しいほどの多忙ぶりに挫けそうだったが、親や友達に励まされ、なんとかレジュメ(履歴書)とビデオを提出し、見事ビデオニュースを作るMultimedia部門のVideo Producerとして入ることになったそうだ。

 

秋学期はVideo Producerとして2週間に1本、自分が興味がある出来事について動画を撮ることを課せられた。私もビデオカメラを手に忙しく駆け回る結花さんをキャンパスで見かけたことが何度もある。時には人混みの中をすり抜けてでも伝えたい、いや伝えなくてはならないことがある。これからの時代、映像はどんなことを伝えるにしてもますます重要なものになってくる。視覚的に伝えるということが、どれだけの影響力を持つか。拡大するニューヨークタイムズの動画部門やインフォグラフィックの影響力、また自身がミスコン時代に書いていた写真つきのブログを通じて、映像や写真などの視覚的な情報がどれだけの人をキャッチすることができるか、結花さんは痛感しているという。


<共同生活>

 

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春学期になって、秋学期は忙しすぎてできなかったソーシャル面を充実させようと、Co-Edのプロフェッショナルフラターニティーが住む家に引っ越したそうだ。フラターニティー(Fraternity)とは学生が集まる友愛の連帯組織で、様々な種類のものがあるが、そのフラターニティーは国際関係に興味のある人たちが集まるものだった。22人との共同生活の中では、毎週の様に開催されるイベントに便乗参加する中で、アメリカに住む人間が何を考え生活しているかを知り、結花さんもいつか去って行く留学生というよりアメリカに住んでいるという感覚が強まったという。

 

Daily Calの方ではMultimedia部門全体を仕切るEditorに昇格し、自分でただビデオを製作するのではなく、他のProducer達14人が作るビデオにフィードバックを与え、そして他の部門とも交流しDaily Cal全体の意思決定に携わる部門長になった。一人で作業することが多いProducerだった前期よりも、他部門のEditorたちが集うエディトリアルミーティングなどでの交流を通して、ジャーナリズムの倫理を理解したり、報道内容を事実と照らし合わせたりと色々なことをやった。毎週日曜日に夜中まで作業をして月曜日の発行に向けての動きなど、新聞ならではの情報最先端の現場も経験した。


<12/6 バークレープロテスト>

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結花さんがバークレーで最も衝撃を受けた出来事は、昨年末に市内で起きたファーガソン発のプロテストだったという。警察による黒人差別を非難していたデモの行進が警察と衝突し、警察側が催涙ガスなどを使い一部暴力的な取り締まりをしたことに怒りの声を上げたバークレーの市民や議会を取材した。その時に、今までは身近ではあったが見えていなかった潜在的なバークレーの問題などが浮かび上がってきた。バークレー市議会で問題視されていた住宅の価格高騰や警察の蛮行、大学の学費高騰など、一体何が問題なのか、もちろん日本にいればわからないことなどがジワジワと現実味を帯びてきた。

 

“Whether you care or not, if you start to care about the city, you are part of it.”

 

結花さんがバークレーの市民を取材した時に言われた言葉だそうだ。それまでは留学生だからどこか「外部の人間」と思っていたが、この言葉に感化され、自分もコミュニティーの一員として、積極的に先の問題の根源に迫り、取材をしていこうと思ってきたそうだ。

 

そんなバークレーでの少し過激な経験が結花さんの考えを変えた。今までは自分が日本人であるということに執着して、海外の人達に日本のことを伝えよう、日本に海外のことを伝えようと考えることが多かった。でも何人とか国籍はそれほど気にしなくてもいいのかもしれない。むしろ人種じゃなくて人として、ジャーナリストとして、自分が発見し明るみにすべきことを正確に捉え、的確に伝える。それこそが本当に結花さんがやりたいことなのかもしれない。


<”What do you want to do?”  “I don’t know??”>

 

バークレーの学生と触れ合っていく中で感じたことがあるそうだ。それは1年生ならともかく4年生でも「卒業したらどこで働くの?」と聞くと”I don’t knowと答える人がバークレーでは多いと言う。

結花さんも今までは将来の夢に到達するためのクリアなビジョンを持とうとしていた。でもバークレーで卒業後”I am taking a year off(ちょっと一年休暇を取る)”と、突然イタリアの学校へ先生をしに行ったり、アフリカなどの途上国のボランティアに行ったりする友人達を目の当たりにし、考えはガラリと変わったそうだ。今するべき勉強なり活動なりを、自分ができる最大限にこなしていれば、本当は将来のことなんて焦って決めようとしなくても道は開けてくるのかもしれない。やることを絞ることはいつでもできるが、やることができることを広げるなら今しかない。海外メディアに入り活動することだってオプションになった。

 

留学という限られた時間を有意義に過ごすために、行く前から目標を決めていた結花さん。全力疾走する中でスキルや経験を身につけられたこと、また取材の現場で自分とは異なる様々な境遇の人と出会い話す中で、とにかく視野と、将来の選択肢の幅を広げることができたと教えてくれた。そしてもう一つ自分が感じたのは、誰かと一緒に何かをやるという可能性は海外にだってあるということだ。SNSがどんな国の人とも自分を繋いでくれる時代に、国とかで囲ってはいけない。自分と同じビジョンを持った人は他の国にもいくらでもいるかもしれない。

 

たくさんのことを学んだ結花さんの留学生活はまだ終わらない。夏からDaily Calで今度はニュースライターとして活動し始め、30本以上記事を書き上げてから帰国するそうだ。自分が1年後2年後、どこで何をしてるかはまだわからないけれど、やりたいことと真摯に向き合っている自分でいたいと私に話してくれた。

 

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Taku

UC Berkeleyで数学と哲学を専攻しています。大学生活はなるべく勉強から離れて音楽に夢中になったり小説を読み耽ったりしようかと甘いことを考えている2年生です。どうぞよろしくお願いします。ご感想・お問い合わせ大歓迎です:takut12[at]gmail.com